平家パイ
先日、「何かこれはという甘い物はないかいなァ。」と大手スーパーマーケットのお菓子売り場を歩いていた時のことである。
なにやら蠱惑的な雰囲気のお菓子が目の隅をかすめたのであった。
ふと立ち止まってそのお菓子を見ると、パッケージに「平家パイ」と記されていた。
「はて面妖な。源氏パイなら幼い頃から食べておったがのう。」
と思った瞬間に、隣に「源氏パイ」が並べてあるのに気付いた次第であった。
パイの源平合戦というところであろうか。
早速、「平家パイ」と「源氏パイ」の徳用袋をムンズと掴み、レジに向かったのであった。
持ち帰って袋を開けると、個別包装されたパイが出てきた。
「平家パイ」も「源氏パイ」も海外での販売も行われているようで、名前以外は英語で表記されていた。
中身を出してみると、「平家パイ」は洋酒に漬されたレーズンが中央に置かれていた。
一齧りしてみると、生地のクリスピーさにしっとりしたレーズンの歯応えが絶妙である。
咀嚼を繰り返すと、ラムレーズンの様な酒精味を帯びたレーズンの甘味と焼かれた生地のバター風味の小麦粉味が得も言えぬ大人の味わいであった。
一方、「源氏パイ」は表面にお馴染みの光沢を湛えるとともに重ねられた生地が波打つ層として現れていた。
これも一齧りしてみると、うなぎパイに類似した(あるいはうなぎパイが類似しているのかも)ブロック的に崩壊していく様相を呈したのであった。
更には、縁取り部分の甘く香ばしい部分がホロリハラリと剥がれ、これだけをいただくという楽しさも昔のままであった。
ところで、「源氏パイ」は幼い頃から知っていたものの、「平家パイ」はいつ頃から世の中にでているのであろうか・・・。
ネット情報を探すと、「源氏パイ」がリリースされたのは1965年であり、私が12歳の頃のことである。
一方「平家パイ」の市場リリースは2012年ということであった。
そういえば、源氏があるのであれば平家があってもおかしくはないはずであることに気付くべきであるが、幼い頃は古典文学に興味もなく、またその後も我が知識は進化を遂げておらず、源氏パイを知っているだけで特に不思議を感じることないままこの歳まで来てしまっていたのであった。
なお、源平にような対立概念をベースにした命名について考察を続けると、夜のお菓子「うなぎパイ」に対して昼のお菓子「穴子パイ」はないのか、はたまた滋養強壮の「ウツボパイ」はどうか、などととどまるところが無くなりそうそうである。
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