銀座/ 泰明庵 (かき揚げ天もり)
夜の泰明庵
10日ほど前のことである。
HO氏と永田町の議員会館で外交時事放談を聴いた後、銀座で一献傾けることにした。
向かった先は蕎麦の名店である「泰明庵」であり、夜は蕎麦前に一献飲ることができる佳店である。 ビール、男は黙ってサッポロビール。女将さんは収益計算か?
引戸を開けて2階に上がると既に満席状態であって、再び1階に戻ると左程の混み様では無かったことから壁側の奥から2番目のテーブルに着くことができた。
その後1階も混み始めたが、女将さんの優しさから我々は相席にさせられることなく最後までゆるりと過ごせたのであった。
テーブルに着いて永田町から歩いてきた体温を鎮めるべくビールを注文した。
ビールを注文すると銘柄を問われたが、M社時代の名残でサッポロビールをいただくことにした。
お互いのグラスにビールを注ぎ、程良く泡ができたところで乾杯した。
喉越しの美味さ、食道を伝わる快感、胃の腑に流れ込む充足感、実に佳い感じであった。 豊富なお品書の札
ビールで一息ついた後、肴の選択に入った。
壁の並んだ短冊を見るとなかなか心が定まらなかったが、お姉さんのお薦めを容れて「水茄子」、「春野菜の天ぷら」、それから私の好物である「出汁巻き玉子」をいただくことにした。 水茄子
程なくして「水茄子」がテーブルに置かれた。
早速口に運ぶとパキッとした食感が涼やかで、程良く漬けられた浅漬けの塩味と茄子の淡い蘞味が得も言えぬ美味さであった。 春野菜の天ぷら(蕗のとう、こごみ、菜の花)
また、続いて供された「春野菜の天ぷら」(という名前だったように思う)は、蕗のとう、こごみ、菜の花が天ぷらにされていて、それぞれに濃淡はあるものの固有の葉緑素系の苦味と、そこに衣の植物油系の旨味が加わり、これまた頬落・落涙・涎落・洟垂の境地に至ったのであった。 出汁巻き玉子
「出汁巻き玉子」は味付けは抑えめにしてあって、そのままいただくのも好し、大根おろしでいただくのも好し、醤油でいただくのも好し、という酒の肴としては王道の一品であった。
HO氏は体調調製の意味もあってビールを続けられたが、私は例の如く清酒に切り替えた。
最初に一杯は特別純米酒という文言に魅せられて「黒帯」を選択した。 「黒帯」の表面張力
「黒帯」は清澄な味わいの清酒で、肴との相性も良かった。
清酒とくればやはり噛んで味の出る肴が良い。
HO氏に相談すると氏はビールを飲みながらも選んでくれたのが「うるめいわし」であった。
また、加えて「さつま揚げ」もいただくこととした。 うるめいわし
「うるめいわし」は炙る程度に焼かれた状態で供され、熱が通ったことによってその身に弾力の強い柔らかさが宿り、これが実に良い歯応えとなっていた。
また咀嚼を繰り返すことで旨味が広がり、そこに清酒を含むと悶絶的旨味の饗宴が繰り広げられるのであった。 さつま揚げ
暫らくして供された「さつま揚げ」は同じ魚を原料としていながら枯れた「うるめいわし」とは好対照の油系の一品で、噛めば噛むほどジュワリと旨味が滲みだし、これまた清酒の佳い肴なのであった。 天狗舞
清酒の二杯目をいただこうかという段になって、HO氏も清酒に切り替えられることとなった。
選ばれたのは「天狗舞」であって、これは「泰明庵」がず~っと昔から置いている清酒である。 壁には年を経た天狗舞のお品書
その証左の一つとして年を経て紙が劣化しつつあるお品書を壁に見ることができるのである。 天狗舞は淡い黄色
「天狗舞」もお姉さんが受け皿に溢れさせながらもちゃんと表面張力で液面が盛り上がるように注いでくれた。 天もり
かき揚げ天もり
最後に蕎麦で〆ようということになり、HO氏は「天もり」を、私は「かき揚げ天もり」をいただいた。
なお、HO氏から海老の天ぷらの一本をいただき、私からはかき揚げを一個進呈したのであった。
最近のコメント